聖女と淑女と少女達とそして従者

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厭味ったらしくエルは言ってやる。大分苛立っているみたいだが、勿論逆恨みである。 「なんですって?」 「女のヒステリーは見苦しくてよ」 「性別なんて関係ないですが、とりあえず逆恨みは非常に醜いですよ」 言い争いを始めようとしていた二人に割って入り、言ってやるファイ。 全くもってその通りである。 「ファイ? 貴方また……っ!」 殺気を瞬間的に感じる。 「終わりました! 終わりましたから!」 「うんうん。分かっているよ。だから、こんな所で油売っていないで、早く次の仕事をしましょうね」 クロノの笑顔の威圧に頷く事しか出来ないエル。先程までの威厳がありゃしない。 さっきまでは良家のお嬢様の中でも、より別格の雰囲気を出していたというのに。 今はその面影すら感じられない。 「次の仕事ってなんです。私の仕事はこれで終わったはずですが?」 「ほかにも仕事があるんでしょう? 見回りとか、ね?」 「その見回りの途中で、件の奴を見つけた後でしたが」 「ほう、で? 取り逃がしたと」 「ええ、まぁ……そうなりますわね」 溜息を吐いて、エルはそう言った。余程悔しかったのだろう。 その瞳には若干、憤怒の情が垣間見える。 「じゃあ、とりあえず場所を変えて話をしようか。きみきみ、一番近くの交番を教えてくれないか?」 すぐ近くに居た警官にそう尋ねるクロノ。 場所が場所で機密事項を話す訳にもいかない。 それに、彼自身が予想したところによると、襲われていたのは恐らく、あのアリギエーリの娘だ。 それを助ける為に、あの二人が介入したと言った所が妥当だろう。 どうして、二人が喧嘩していたかは知らないが、何時もの事なので気にしない。 どうせ、下らない事であるのは確定事項である。 尤も、下らない理由であそこまでの戦闘を繰り広げられたら困るのだが。 「それじゃあ、場所を移動しようか。そこのお嬢様方も勿論、ついて来ていただきますよ」 「なんで私が!」 当然、嫌がる。彼女はどうだっていい。 が、有無など言わせないのが、この親子の性分である。 「嫌だ、と言われてもきちんとついて来て貰うよ。これは、君達に発生した義務だ。まぁ、少しだけ話を聞くだけだから、安心してくれ」
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