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そう言うと強引に二人を抱えて、移動を開始する。
徒歩で移動をしていたクロノだったが、警官に頼んで車を回して貰ったのだ。
二人を強引に車内へと連れ込むと、車を発進させるように指示を出す。
その後ろをファイとエルのコンビが飛行してついて行っている。
本当は飛行系統の魔法は、魔力を常に消費し続けなければならない為、燃費が非常に悪く、滅多に使わないのが常識だ。
が、今回に限ってはその限りでは無い。
移動距離もそこまでない上に、車の移動速度に合わせる為には、やはり飛行しての移動が最も望ましいと言えるだろう。
ほんの五分ほど移動をすると、目的の警察署は見えてきた。
治安を守る警察署、とは言うが、実際にはそこまで重罪人を追いかける訳では無い。
ある程度、無理だと分かったのなら次にギルドへと話を持ちかける。
只でさえ、簡易的な事件や事故で人員が足りないのだ。
一つの事件に長く関わっている暇がない。
警察署の内部は至って普通である。幾分か年季の入った建物の内部は、綺麗とは言えないが、清掃はしてあるらしく汚くは無い。
部屋の数だけはやたらとあるが。
捜査課などの各課に振り分けられた部屋の他に、取調室、会議室などが多量にある。
その内の一つを、クロノは借りるとすぐに移動をした。
長机にパイプ椅子。それだけのシンプルな部屋だ。
これでも、上等な部類の部屋らしい。
「とりあえず座ってくれ。ああ、飲み物はコーヒーで良いかな」
「結構よ。こんな座り心地の悪い椅子になんて座れないし、唯の苦い湯なんて飲めませんわ」
育ちの良いお徐様には、流石にこの環境は劣悪といえるだろう。
まぁ、ビーチェ以外は関係のない話の為、彼女一人と従者であるビリーを除いた全員が椅子に座る。
ビリーも関係は無いが、主人の手前、自分だけ座る事は出来ないのだろう。
クロノは困った風に笑うと、すぐさま質問を投げかける。
「君はさっき、襲われたんだよね。その時の事を詳しく教えてくれないかな」
「……私はビリーと一緒に帰っている途中、喉が渇いて飲み物を買いに行かせた。その少し後に、突然、フードをかぶった男に腕を掴まれたの」
その時の光景が目に浮かぶようだ。
恐らく、このエルに負けず劣らず我儘なお嬢様は唐突に飲み物が欲しいとか言い始めたのだろう。
近くには広告があった気がするから、それの影響かもしれない。
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