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「見ましたでしょう。あれと同じ魔法を使用して、簡単に逃げられたんですの」
どうやら実演して見せたらしい。
その魔法を見たクロノは唸る。
「確かに、油断はしていたみたいだが……協力者でも居たのか?」
「その場にはあの人物以外にいませんでしたわ。という事は自力で脱出したという結論以外考えられません」
「随分、力任せに解いたという事か?」
「技術でどうにか出来る時間なんてありませんでした。スモークで姿を隠した直後に、強引に外したと考えた方が良いですわ」
「とはいっても、それが出来るとなると……」
本当に厄介な相手だ。
魔力の使い方に一切の無駄がない。
直観的に相手には敵わない事を悟った。
絶対に勝てない。勝てるはずがないのだ。自分がどれだけあがいても解けない、拘束魔法をいとも簡単に解いて逃げるなんて。
そんな芸当が出来る奴に勝てる方がおかしい。
第一に、一撃目。
あの一撃目は腕という末端部位を狙ったものだった。
考えてみたら、当たらないのも当然の事だが、その後に身を引いた距離をよくよく思い出してみる。
するとどうだろうか。相手の脳天を狙った一撃すらも、回避されているではないか。
擦り傷の一つもつかずに。
実力がかけ離れている。
いや、これが本来正しいのだ。
いままでなんの苦もなく大人に勝てて来た方が変な話だったのだ。
幾ら今まで「それなり」に訓練を積んでいたからと言って、大人に勝てる訳がない。
それに今までの事はすべてリオンとの訓練によって、急激に実力が上がったものだ。
もし、リオンと出会わなければ、今頃死んでいたに違いない。
惰性で生活していた連中だから勝てたのかもしれない。
どうせ、加担するのは大した実力のない連中だ。あぶく銭に目が眩んで手を貸したに違いない。
楽して金を稼ごうというチンピラくずれを引っ張ってきた。
だから、ちゃんとした「戦闘訓練」をつんだファイ達に勝てなかった。
カレナに至っては実戦も行っていた。だから勝てるのだ。
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