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「ちょっと、リオン」
委員長はチケットが本物である事を確認すると、すぐにリオンに話しかける。
「なんだよ、委員長」
若干不機嫌そうに、リオンは彼女の言葉に応じる。
「何であんたが、あんなものを持っているのよ」
「さっき言っただろう? 俺は偶然福引きで……」
「確かに福引きであてたのなら納得はいくわ。でもね、あんたがなんでクルドさんを誘ったのかが、気になるのよ」
「もしかして、やきもち?」
リオンは試しに茶化して見る。別に他意はない。ただなんとなくだ。
「違うわよ!」
そんなリオンの言葉に、委員長は顔を赤らめて力一杯否定する。
「あんたには、別に彼女がいるんじゃ無いの?」
「彼女……? 俺にはそんなものいないが」
眉をひそめて、リオンはそう言う。
確かにリオンには彼女はいない。
それに懇意にしている人間の女性なんて。
「嘘よ。私は見たんだから。あんたと一緒に歩いている綺麗な女の人を」
「……いや、別にそんな人はいないんだが……」
詰め寄る委員長に、困惑するリオン。
本当にリオンには心当たりがないのだ。
ただ、リオンは完全に忘れている。
たった一人、女性であるという事を忘れている人が。
「良いわ。どうせファイに聞いたら分かるでしょう!」
フンと鼻を鳴らして、彼女はリオンの前から去っていく。
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