聖女と淑女と少女達とそして従者

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何時の間にやら親離れが始まっていたらしい。 親としては嬉しくもあるが、若干寂しくもあるのが本音だ。 ただ単に考えるのが、最近どんどん面倒になってきているのだ。 それもこれもリオンの影響だ。細かい事を考える前に行動する。目の前の問題を気にする。 「とにかく。対応をどうするか!」 「先程も言った通りしばらくは、放置ですわ」 「またどうして」 「如何に頑張っても、あれだけ神出鬼没な犯人を捕まえるのは難しいですわ。此処は相手の出方を待つのが賢明ですわ」 「出方を待つと言っても、その間にもし被害者が出たりしたらどうするんですか」 「大丈夫ですよ。この犯人は誘拐なんてしません。ほんのちょっと怖い目にあうだけですよ」 何故そう言いきれるのだろうか? 甚だしく疑問だ。しかし外れた事は無い。 此処は大人しくしておくのが吉なのだろう。 「分かりました。それで、この二人はどうするんです?」 ぼんやりと話を聞いていただけの二人をさして、ファイは尋ねた。 「もう帰しても、問題はありませんわ。この位の情報があれば十分ですから」 「という事ですので、お二人とも有難うございました」 深々とファイが頭を下げる。 この言い方は非常に厭味ったらしいが、実際ちょっと厭味が入っているので、問題は無い。 というか自分も貴族なので、こういった発言は控えて貰いたい。 こんな奴が居るから貴族というだけで、時折酷く白い眼で見られる事があるのだ。 ビリーには申し訳ないが。 「ちょっと! 引き留めるだけ引き留めておいてそれだけなの!」 口やかましくビーチェが怒鳴ってくる。 「ごめんね。それだけなんだよ。犯人の情報が欲しかっただけなんだ」 穏便に済ませようと柔らかな口調でそう言ってやる。 「だったらあそこでも出来たじゃ無い!」 「あのまま大衆の眼にさらされたまま事情聴取なんてできる訳無いだろう?」 「だからってこんな所まで……」 「そう言わないで。家まできちんと送って行くから」 「そう言う問題じゃ……」 「ああもう煩いですわね」 眉間に青筋が浮いているエルが魔導書を開く。 そして、一ページの魔法陣に魔力を込めた。
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