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その次の瞬間に魔法陣が、彼女達の足もとに浮かびあがる。
「ちょっと! これ一体何よ!」
「煩いですわ。少し黙ってらっしゃいな。死にますわよ」
未知の恐怖に、冷や汗をかきながらあとずさる。
「普通に送って貰う事を受け入れておけば、こんな思いはしなくて済んだのですが……」
エルはいかにも、残念です、と言いそうな表情をして、しかも溜息を吐きながら、言った。
「残念です」
その刹那、輝きはまして彼女達を覆い隠した。
そして、その光が消えた後に、そこには誰もいなくなっていた。
「な、何をしたんです!」
やれやれと、一息ついているエルに詰め寄る。
人が二人も消えたのだ。言葉遣いや口調はあれだったが、なんの罪も無い人だった。
……いや、あの様子では何かと罪はありそうだが……。
「ああ、気にしないで。あの二人は自宅に転送しただけだから」
「転送って……今の転移魔法陣だったんですか?」
「そうですわよ? まぁ、その気になれば物を事にするなんて簡単ですけど」
「……要するに?」
「あの二人をブラックホールに放り込む事が出来た、って事ですわ」
「そんな恐ろしい事を考えないで下さいよ……そもそも、貴方も生きて帰れないでしょう」
「あらあら、安く見られましたわね。所詮重力ですわ。私なら抜け出せますわ」
「光を飲み込んで抜け出せない空間に対して、非常に失礼です」
「光なら、ですわ。同じ重力ならどうなるんでしょうね」
確かに。
「でも試した事はありませんわ。流石に失敗したら、出て来られる自信がありませんから」
まぁ、それを試すには退屈が少なすぎるのが現状だった。
もう少し別の退屈しのぎがあったので、やって無かっただけだ。
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