7442人が本棚に入れています
本棚に追加
「さて、今後の事だが」
途端に口調を元に戻して、息子に話しかけるリオン。
「父さんはいつ見ても美人だよね」
「その話はもう良い。もともと、お前達を喜ばせる為のものだったのに……」
衝撃の事実に驚いた。
父と母が昔は孤児で、本当は祖父に拾われた事くらいは知っていたが、この……なんと言ったらいいのだろうか……変装については聞いていなかった。
恐らくは、母親が恋しくなった時に使っていたのかもしれない。
「ともかく、だ。この件はウルドに報告しておく。お前はいつでも動けるように待機しておいてくれ。内部の事は俺が調べておく」
「分かった。頼んだよ父さん。ファイを頼む」
「任せろ」
面倒を見ているのは、むしろファイの方なのだが、それには触れないでおく。
ファイ自身が気付かないような鍛え方もしているので、やはりそこは祖父といった所だろう。
亀の甲より年の功。伊達に人よりも長い歳月を過ごしてきたわけでは無い。
ファイ達はその後、すぐに警察署を出るとそれぞれ帰宅していった。
リオンとファイに与えられた部屋は、学校から一キロ程度離れた所にあるアパートだ。
規模としてはそこまで大きくはないが、長期滞在を目的としている訳ではないので、問題は無い。
因みにキッチンとトイレ、お風呂はきちんとついている。
生活に必要な最低限の物は揃っている。
部屋に入ると、リオンは真っ先に女装を解いた。
服装は支給品のままなので、スカートというなんとも不釣り合いな格好だ。
正直気色悪い。
この光景を見て喜ぶ奴が……いた。一人。
ファイは自分の幼馴染を思い出す。
カレナはこういった本を、少なからず一冊は所持していたはず。
世間では腐女子というらしい。
呼び名なんてどうでもいいが。
もしかしたら、自分とリオンの関係をそんな風に勘違いして、息使いを荒くしている奴がいると思うと、正直ゾッとするのは事実だ。
男に戻ったリオンは服を乱雑に脱ぎ捨てると、ベットへ横たわる。
「あー疲れた。女の格好なんてやってられるかっての」
下着姿で横たわるその姿はまるでおっさんだ。
最初のコメントを投稿しよう!