聖女と淑女と少女達とそして従者

44/47
前へ
/617ページ
次へ
当然報道規制というものはどんなことにもあるものだ。 特に戦後の国では珍しい事では無い。国民の士気を上げる為に必要不可欠な事だからだ。 とはいっても、この国は他国との戦争に辛勝した。 国民の士気など殆ど気にする必要はない筈だ。 「あー見た目にゃそうかもしれないな。国民の方はそうだとしても、貴族連中ががたがたなんだよ」 ああ、それで。一人納得する。 貴族に対しての不満というのは殆ど、常にあると言っても過言では無い。 どのような時代であったとしても現行の政治をよろしく思わない平民は多い。 特に、先の戦争はリオン一人の力で勝利したと言っても良い。 いや、リオンがいなければ、この国は今頃植民地として、奴隷商人達が出入りしていた事だろう。 それほどに劣勢だった。 それほどまでにこの国は脆弱だったのだ。 如何に個人が強いといえども所詮、数の暴力には勝つことは出来ない。 戦争において有利なのは、何よりも数が多い事である。 とまぁ、そんな常識論は放っておこう。 圧倒的に不利な状況を打開し、この国に勝利をもたらしたリオンは、英雄ともてはやされた。 だが、勝てなかった、無力だった貴族はどうだろうか? 彼らはその地位にいる事を国民に疑問視された。 見せかけが壊れてしまえば所詮、能力は知れている。 伝統がなければ、所詮は知れた存在。当然、反発が起き始める。 いまや貴族たちはその足下ががたがたで、いつ崩れさってもおかしくは無い。 現状を維持しようと必死なのだ貴族は。しかも中途半端に力があるものだから始末におけない。 そんな事があるからファイ達がここにいる羽目になったのだ。 「にしても迷惑な話です」 ファイは料理をテーブルまで運んで言う。 「全くだ。お陰で此方にとばっちりが来てしまう」 「まぁ、貴方は少し働くべきですけどね。いつまで放浪ニートやってる心算ですか」 「知ってるか? ニートってのは働かない奴を指し示す言葉じゃ無いんだぞ?」 「そんなこと聞いてませんよ。というか、一般人はそんなこと気にしません」 なにを言いだすのかと思えばそんな事か。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加