聖女と淑女と少女達とそして従者

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何処かの建物の中。 そこはお世辞にも清潔な部屋とは言えず、明かりも小さな電球が一つだけだ。 精々、子供の秘密基地に金がかかる装飾がついた程度の粗末な代物。 そんな薄暗い中、数人の人物が顔を近づけて何やら相談事をしていた。 顔を近づけている、という事は外部に漏れてはならない、内密な話という事だろう。 「邪魔が入り始めたな」 「あの、転校生が厄介な物を配ったからな」 「だけど、あの人たちはそれを使おうとしていない」 「得体のしれない物に頼るほど、あいつらは信用するという言葉を覚えていないさ」 「確かに。人を疑う事と見下す事だけで出来たような奴らだからな」 「だが、あいつは強いぞ」 「ウルドに勝つ程の実力、俺たちでは対抗出来ないだろう」 「あの位なら問題にならない。こちらには切り札があるんだからな」 「あいつは此方側につけることが出来ないのか」 「分からない。だが、あいつは貴族だ。無理だと思った方がいいだろう」 「そもそも、貴族を味方につけるという考え方が間違っている。あいつは敵だ」 「だがしかし、あいつは俺達と同じだ。味方にできる可能性も無い訳ではないだろう」 「確かにそうかもしれないが、確率は非常に低いだろう。ここで分の悪い賭けに出る訳にも行くまい」 「そうだ。これが露見すれば事だぞ」 「今が一番重要な時期だからな。それで、決行はいつにする?」 「近いうちが良い。出来るだけ人が集まる瞬間を狙って行動を開始する。それが正しいだろう」 「それがベストだな。戦力的には、此方が圧倒的に劣っていると言っても過言では無い」 「それは数の上での話だ。質的には此方が上回っている」 「冷静な状況判断は大切だが、過信はいけない。此処は足りないと考えるべきだ」 「外部からの干渉を遮断できる手段があるとして、内部の教師に手練れは?」 「いるだろう。ヴァンだ」 「ああ、あいつ一人くらいだろう? だったら問題は無い」 「他に脅威となる教師は?」 「見当たらない。精々、ウルドだ。奴が向かって来ては勝ち目がない」
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