うのうぇn。貴方は何の為に?

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しかしそれにしても……。 ふと、目の前の生徒から視線を外して、少し離れた場所で組手を行っている、ビリーを見る。 彼の実力は明らかにここにいる生徒達とは異なっていた。 見ているだけでは分からない。 拳を交えて初めてわかる物を知った。見ていればわかるものだと思っていたのだ。 しかし、今回は分かった。 傍から見ている分を隠すのが十分に上手い奴だっているのだ。 リオンも上手い事には上手いが、どちらかと言えば誤魔化す方が上手い気がする。 彼の実力は明らかに自分と同格か、それ以上。 こんな所で眠っているような人材では無い。 彼がどのような道を選ぶのかは定かでは無いが、勿体ない事だと思う。 そんな事を考えていると、相手の生徒が懐深く踏み込んで来る。 どうやら、隙と判断したらしい。 だが、彼の動きではファイをとらえる事は不可能だ。 突き出された拳を回避すると、腕を掴んで投げ飛ばす。 この位の事なら、見なくても体が自然に反応するようになった。 「うわぁ!」 投げ飛ばされた少年はそのまま強かに背中から地面に叩きつけられる。 本当なら空中で体勢を立て直して着地する事も出来るのだが、流石にそれだけの実力がない。 まぁ本来、ユーレリウルの生徒でも難しい事だ。受け身をとってダメージを減らすのが精いっぱいだろう。 因みにファイが優秀なだけだ。 「大丈夫か?」 「あたた……いや、大丈夫。やっぱりユーレリウル学園に居ただけあって、強いな」 「いやいや、これでも普通だったんだけどね」 苦笑しながら生徒の手を引いて、ファイはそう言う。 事実、あの学校には彼以上の実力者はゴロゴロといるのが現状。 そうでなければ、名門として成り立っていない。 まぁ、実力だけがあっても生き残れない世界だ。如何に強くとも、強靭な体であっても、頭が回らなければ無意味だ。 故に一年生では基本的な戦術授業だが、二年生からは戦略の授業も行うのだ。 そうして、二年生の二学期からはより専門的な方へ進む。 戦略か、戦術か。 どちらかを選ばなくてはならない。どちらにしても、才覚を出す者は出すのだ。 「謙遜だよ。それだけあれば十分だと思うけどな」
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