うのうぇn。貴方は何の為に?

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これだけ、で十分ならそこでやめるんだけどなぁ。 心の中でほぅと溜息を吐く。 必要だから、まだまだ強くなるんだ。必要無い事はしたくない。 「まぁ、人それぞれだよ。俺はそっち方面を目指していたから、使用人の仕事は何一つ出来ないけどね」 「ああ、そう言えばそうか。紅茶の淹れ方とか分からないし、気遣いの仕方が下手だもんね」 「仕方ないじゃないか。こっちはそんな勉強を、これまで一度もしてきたことが無いんだから」 「そりゃあそうだ。こっちは小さな頃からフットマンとして働いてきたんだからね」 「そのフットマンってのは?」 聞きなれない単語に、ファイは尋ねた。 彼は貴族ではあるが、基本的にはあまり貴族らしくない。 というか、父親が貴族になってしまっただけなので、本人にその意思はない。くどいようだが。 「おいおい。お前、本当に貴族かよ」 「一応はね。名ばかりで余り力は無いけど」 「おかしな奴だなぁ……常識だって言うのに」 男子生徒は溜息を吐くようにそう言った。心底呆れているらしい。 生粋の現代っ子が、執事の意味を理解出来る訳も無い。 「悪かったね変わり者で。で? 一体どういう意味なのさ?」 「いいか? 執事って言うのは階級の高い使用人の事をさすんだ。バトラーってよく言うよな、あれの事だ。代わってフットマンだが、これは下級の使用人を指すんだよ」 「へぇ、階級があったのか。知らなかったな」 使用人に階級がある事を知らなかった。そもそも、使用人は使用人だとばかり思っていたのだ。 「お前の家には、家事仕事を取り仕切る上司みたいな奴はいないのかよ」 「いる事にはいるけど、一番家にいる期間が長いから。年功序列でそうなっているもんだとてっきり」 あの薙刀を持ったメイド長を思い浮かべて、ファイはそう言った。 大体の家の仕事は彼女がまかなってくれている。 一応、他にも使用人はいるのだが。 「まぁ、そんなことも珍しくはないけど、大体、使用人って言うのは能力で階級を決められるんだぞ」 思っていた以上に、シビアな世界らしい。ファイの自宅とは大違いだ。
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