うのうぇn。貴方は何の為に?

6/73
前へ
/617ページ
次へ
なんと言うか言葉にできない感覚なのだ。 別に自分の事を恵まれていると自慢がしたい訳では無い。 只、こう、今まで続けて来た事とは正反対の事をさせられて、慣れないで戸惑う、とかそういう感覚に似ている。 其れに主人があれだから。 「良く分からんが苦労はしているんだな」 「人並みには、ね……」 肩をすくめてそう言う。人並みの生活を送っていたのが、唐突にこれだ。 人生塞翁が馬。 なにが起こるか分からない。 無駄に怠惰な生活を送る気はないが、かといって忙しくなるのも嫌いだ。 人生、平凡こそが一番! だというのに……。 周囲を見回すと、護衛術を学ぶ使用人たち。それは未だいい。 未だいいとしよう。経験を詰むという事を、父親がさせているのだろう。 社会に出れば、この程度の事には普通に遭遇する。 「でも、熱血マンガみたいなノリは嫌だよなぁ……」 一人愚痴る。わずか半年が、もう何年にも感じる。 一人愚痴を言っても仕方ないので、休憩もそこそこに再び護衛術の練習に戻る。 例え児戯でも、やらないよりはましだ。体が鈍らない分には。 こうしてファイは今日も従者たちの中に溶け込んで行く。 その後授業は大きな問題も発生せずに、最後の時間割まで進んだ。 放課後を除けば、大体が平和な毎日だった。 相も変わらず、不審者は現れ続けていた為に、放課後は駆けまわる事が多かったものの、それ以外では平凡な日々そのものだった。 まさしくこれがファイの望んでいた日常だ。 死闘ばかりの日々なんて御免こうむる。 やはり、何よりも大きかったのは、あのエルが初日を除いて一切の問題を起こさなかった事だ。 あの人は本当に、ここに転校してしまえばいいのでは無いのか、と思うほどに。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加