うのうぇn。貴方は何の為に?

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そろそろ始まる時間が迫ってきたのか、人影がまばらながら増えて行っている。 中々、時間をしっかりと守ろうという気がある生徒達はいるらしい。 この学校にいる間は、基本的に主従の関係はほぼ皆無の為、主人を教室まで迎えに行く生徒はいない。 家などでは扉を開けたりエスコートしたり、いろいろとやる事はあるのだが。 まぁ、そんな事は願い下げだが。いくら頼まれても絶対やるものか。 あの人ならどうせ、自分で勝手に行動するに決まっている。 溜息を吐いて、今晩の献立を頭に描いていると、次々と生徒達は集まってくる。 主にお嬢様達ばかりが着々と到着してきているが、従者たちは余り集まってきていない。 一体何をやっているのだろうか? 普段ならば、お嬢様方が来る前に集まってくるのだけれど。 何か問題でも発生したのか? 見に行くべきか? 一瞬の逡巡が彼を襲う。 だが、見に行った所でどうせ大した問題では無いだろう。 そう楽観していたのだ。 そうして時間はあっという間に過ぎる。数分という時間は非常に短いのだ。 そうして、殆どの生徒達は講堂に集まってきているというのに、やはり一部の従者諸君は遅れてきている。 何事かと周囲もざわめき立っている。 どうやら、過去に一度として例のない事らしい。 これはまずい事になった。 人間は突然訪れる不可解な現象についてはとても弱い。 不安を感じる上に、咄嗟に対応できる人間なんてまずいないだろう。 数人の教師が様子を見に行こうかと、講堂を出ようとした。 その時だ。突如として扉が乱暴に開け放たれ、扉の前に居た教師は弾き飛ばされる。 講堂内に居た全ての人が音のした方向に注目した。 そこには、顔を隠したフード姿の男が。 間違いない。あいつは件の犯人。 ウルドが居ない時を見計らってとうとう、学校内まで攻めてきたのか。 いや、おかしい。 だとしたら今までの行動は一体なんだったのだろうか? なんのために、一々手間のかかる事をしたのだ? 「全員、この場で死んでもらう」 男のその言葉を聞いて、ファイは舌打ちをした。 どうやら、考え事をしている暇は無いらしい。
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