うのうぇn。貴方は何の為に?

9/73
前へ
/617ページ
次へ
目の前に脅威があるのだ。 逃げればすぐに危害を加えられる訳ではないだろう。 だがいずれにしても、生命の危機だ。 出入口は窓を除いてあそこ一つ。 そして敵は一人。 だとしたら、与えられる回答は一つきり。 戦って捩じ伏せる! たったそれだけの簡単な話だ。 ファイはその手に愛用の刀を呼び出して、立ち向かおうとする。 その前にすぐに行動した教師が一人だけいた。 ヴァンだ。この聖オラトリオ学院における、ファイの担任のヴァン・リコ・ヴェルトールが誰よりも早く行動を開始した。 周囲の教師たちはただ驚き、恐怖する表情の中で、たった一人勇敢にも彼はフードの男に向かって行ったのだ。 彼の実力ならば如何に相手が強かろうと問題はないだろう。 一対一ならば。 ヴァンの大剣を軽々と、盾で受け止めると、そのまま魔法を使用して弾き飛ばした。 なんという腕力だろうか。 大剣の重量だけでなく、落下の際に付加される運動エネルギーすら受け止めたのだ。 ヴァンは舌打ちをするともう一度突撃する。 それはもう、ファイとの模擬戦時とは比べ物にならない程の速度で。 相変わらず、普通の剣を振るうのと大差ない速度だ。 当然、反撃に出る筈だが、男はそうしない。 だが、男は避けている最中に何かを落とした。 それは地面とぶつかるとほんの少しだけ、特有の高い金属音を立てる。 そうして少しだけ転がった後に、突如として煙を吐き出した。 どうやらスモークグレネードらしい。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加