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目の前に脅威があるのだ。
逃げればすぐに危害を加えられる訳ではないだろう。
だがいずれにしても、生命の危機だ。
出入口は窓を除いてあそこ一つ。
そして敵は一人。
だとしたら、与えられる回答は一つきり。
戦って捩じ伏せる! たったそれだけの簡単な話だ。
ファイはその手に愛用の刀を呼び出して、立ち向かおうとする。
その前にすぐに行動した教師が一人だけいた。
ヴァンだ。この聖オラトリオ学院における、ファイの担任のヴァン・リコ・ヴェルトールが誰よりも早く行動を開始した。
周囲の教師たちはただ驚き、恐怖する表情の中で、たった一人勇敢にも彼はフードの男に向かって行ったのだ。
彼の実力ならば如何に相手が強かろうと問題はないだろう。
一対一ならば。
ヴァンの大剣を軽々と、盾で受け止めると、そのまま魔法を使用して弾き飛ばした。
なんという腕力だろうか。
大剣の重量だけでなく、落下の際に付加される運動エネルギーすら受け止めたのだ。
ヴァンは舌打ちをするともう一度突撃する。
それはもう、ファイとの模擬戦時とは比べ物にならない程の速度で。
相変わらず、普通の剣を振るうのと大差ない速度だ。
当然、反撃に出る筈だが、男はそうしない。
だが、男は避けている最中に何かを落とした。
それは地面とぶつかるとほんの少しだけ、特有の高い金属音を立てる。
そうして少しだけ転がった後に、突如として煙を吐き出した。
どうやらスモークグレネードらしい。
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