うのうぇn。貴方は何の為に?

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余裕は体に滑らかさをもたらす。あり過ぎてはいけないが、必要な潤滑油だ。 「ビリー……あの人の認識を本当に間違えている。あの人はね、君達よりももっと過酷な人生を歩んできたんだ。もし、あの人が誰かを殺す事を躊躇う様な人間だと思っているなら、今すぐにその認識を改めた方が良い」 「どういう意味だ」 「あの人は、見た目はあんな魅力的だったとしても、中身はそうじゃ無いんだ」 「それは君の思い込みだろう」 「違うね。ああ、違うとも。あの人は、小悪魔なんてもんじゃ無いさ。かの有名な大罪を司る悪魔、そのものさ」 「大罪……? ああ、あの七つの大罪の事か。だとしたら彼女はさしずめ、色欲の大罪だろうね」 「それも間違っているよ。彼女は憤怒、それそのものを糧に来たヒトだ」 「憤怒! それこそお笑い草さ!」 「ヒトは仮面を被る。自分を保つ為の仮面を」 「ペルソナかい? そんなものは誰だって持っている。僕にもあったじゃないか」 「そうだ。そして、俺にもある。無論、彼女にも。君達はその仮面を剥がしてしまった」 「だったら、どうだって言うんだ。僕たちはここにいる貴族の娘たちを殺して、名を馳せる。僕達を虐げて来た連中を今度は虐げてやる為に!」 「虐げる為に、か」 未だ、そんな感情が眠っている事にファイは、苦虫をかみしめた気分になった。 「そんな事をしても、見えるものなんてたかが知れているのに」 「君ならそう言うと思っていたよ。そんな綺麗事をね」 「まあ、いいや。下らない言い争いはここまでにしよう」 「君には道になって貰おう。僕が、あの憎たらしい魔女を殺す為のね」
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