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ビリーはそう言うと、自身の得物を取り出した。
その動作をした瞬間にファイは抜刀。
炎の刃が一直線に、敵を切り裂かんと飛んでゆく。
だがビリーにはかすりもしない。回避された。
そんなものは分かっている。
この程度は簡単に避けられる。
当り前だ。地面を蹴って加速する。
そのまま刀を両手で持って、袈裟がけに振り下ろそうとした。
だが、出来なかった。何故か? ビリーの得物が火を噴いたからだ。
その指の動きを見て、咄嗟に回避した。奇跡だ。あと僅かでも反応が遅れていたら、頭に風穴があいた事だろう。
「……まさか、君がそんなものを使うとはね」
掠った頬が切れて一筋の紅い血を流す。
それをぬぐう事もせずにただ相手を見たまま、ファイはそう言った。
「……これがおかしいのかい?」
鈍色に輝く銃口を、ファイに突きつけたまま、ビリーはそう聞いた。
拳銃を専門の武器として扱うなんて、類い稀な話だ。
一発一発の魔力消費が非常に激しい銃を使用するなんて、ありえない。
例え、形状はオートマチックであったとしても、連射するためには若干の時間を要する。
弾倉内にある魔力を薬室に送り込み、収束し放つ必要がある。それだけでなく、弾倉に蓄えられる魔力にも限りがある。
本来、銃弾は金属で出来た弾頭を、火薬で加速させて発射させるもの。
マッチロックガン、火縄銃といった方が分かり易いだろうか。とにかく、銃の原型たるそれは弾を発射するために、火薬を銃口から入れて、弾をつっこんで……とやたら時間がかかる。
その時間のかかる事をたった一つの工程にまとめたのが、良く知るあの銃弾だ。
薬莢、火薬、弾丸、雷管などで構成されたそれは非常に効率が良い。
火縄銃の手間と比べたら、なんて事は無い。あちらが一発撃っている間に、こちらは何十発と撃てるのだから。
魔力を使用した銃弾ではこの弾薬を一つ一つ、拳銃の内部で作っているのだ。
薬室に送られた魔力を収束し、圧縮する。その後に火薬となる魔力を入れ、発射する。
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