うのうぇn。貴方は何の為に?

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何時までもバレルの切り落とされた拳銃を、握っていても仕方ない。 一瞥すると投げ捨て、新たに肉厚のナイフを取り出した。 戦術を変えるのだ。何も二挺拳銃だけが彼の取り柄という訳では無い。 だったら何故、あの時、あのお遊びみたいな訓練の時に、手加減する必要があるのだ? そもそも彼の主戦術は銃を二挺も使用する戦術では無い。 通常の射撃では勝てないと判断した場合、手数を増やす。 だがそれは所詮は手数が増えただけにすぎないし、攻撃力が増えた訳でも戦術に幅が増えた訳でも無い。 そもそも、彼は近接戦闘の方がどちらかと言えば得意だ。 「もう、手加減する必要はないよね」 うつむいて呟く。 ファイは身構えたその瞬間に、ビリーは目の前に居た。 速すぎる! ファイが目を見開くと、鈍く輝く刃は彼へと吸い込まれて行った。 ―――――― 「一体、なんだったんだ……」 封じられた扉を見て、ヴァンは呟く。男を追いかけて行ったファイなら、心配はないだろう。 彼は十分に信頼できる男だと思っているのだ。ヴァンも、エルも。 あの実力を見ていれば、心配する必要性は無いだろう。 この場で彼の事を案じる余裕があるのは、ヴァンとエルの二人だけだろう。 その他の生徒、教師諸君はあの僅かな戦闘だけで大騒ぎだ。 全く、紳士淑女諸君が聞いてあきれる。 ついこの間まで戦争をしていたのだ。だというのに、あの程度の戦闘で騒がれても困る。 まぁ、生徒諸君は無理があるだろうが。 ともかく冷静になって貰わなければ。 「皆さん落ち着いて!」 ヴァンは声を張り上げて、教師及び生徒達を静かにさせようと試みる。 が、集団では無い群衆に、そんな声が届く訳も無く。 ただただ、彼らは慌てるばかりだ。 恐怖はどんどんと伝染していく。 ヴァンの呼びかけにも、全く応じていない。 中には数人の生徒や教師たちが落ち着きを取り戻しているが、それでも全体数からすればごく僅かだ。 溜息を吐くとエルは杖を思い切り床にたたきつける。 ドンという音が風に乗って講堂中に響き渡る。 「皆さん、御静粛に。慌てる事はありません。一ヶ所になるべく固まって下さい」 しんとした講堂内に凛とした声が響き渡る。
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