うのうぇn。貴方は何の為に?

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二人が笑うと同時に連中は斬りかかってくる。 その一人一人を軽くいなして行く。まるで赤子を相手にするように。 殺す必要性すらない。 まぁ、骨の一本か二本は確実に折れている事だろうが、そんなものすぐに治る。造作もないことだ。 この程度では本当に物足りない。 退屈しのぎにすらならない。 戦闘スタイルをヴァンに合わせているので、余計に詰まらないのだ。 叩き、捩じ伏せ、拉げて、引き千切り、砕き、血が飛び散る位の事を楽しみにしていたのだが。 なんと拍子ぬけたことか。 誤算も良い所では無いか。 「凄い……」防護魔法の内部にいた、ビーチェは目の前で広がっている光景を見て呟いた。 自分には絶対に出来ない戦闘だ。 魔法しか出来ないというのに、彼女は魔法陣を使用する事無く、敵の大半を捩じ伏せている。 最早、魔法も使用していない。 「相変わらずお遊びが好きみたいねあの人は」 防護魔法を使用している女性は、そう呟いた。 その呟きに呼応するように、シルノは言う。 「にしても、相変わらずのチートね。魔法無しであそこまでやるなんて」 呆れた風に言う。前に一度見たことがあるが本当に強い。 「当たり前だ。私の主だぞ。弱い訳がない。それよりも心配なのは、外へ出たあの小僧だ」 「お兄ちゃんが? どうしてよ。お兄ちゃんは負けないわあの位の奴に」 眉をひそめて兄の強さを語る少女。 「そうとも限らない。あの男は妙な挙動が多かったからな。それにしても……」素朴な疑問を口に出す。「何故、一人として殺さないのでしょうか」 その答えに答えられる人は、そこには誰もいなかった。 「つまらないですわね。この程度で私に逆らうつもりだったなんて」 退屈そうにエルがそう呟いた瞬間だった。 彼女の左手が斬りおとされた。 手首からばっさりと、綺麗に。
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