うのうぇn。貴方は何の為に?

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エルの目の前に大きな魔法陣が現れる。 丁度、エルと敵の真ん中、挟まれるような形で。 当然、突如として現れたそれに驚く。 が、その一瞬の間に魔法陣は光り輝き、男の体を炎が飲み込んだ。 「なあぎゃぁあ――」 短い断末魔と共に灰と化す。最早、人であった頃の面影はおろか、骨すらも残っていない。 その出来事は、五秒にも満たない間の出来事だった。 「あら、失礼。焼き豚にもならなかったわね」 くすり、と。 まるで悪びれもせずにそう言う彼女の姿に、敵味方問わず戦慄した。 幾ら自分の身に危険が迫っていたとして、人を殺して普通でいられる訳もない。 正常な人なら殺人という事実に恐れる。 だが、彼女はそれが無い。 物を壊した、という感覚に近いのだろう。要らない物を。 ふわ、と。杖を一振りすると、そこらに落ちたままだった手が、空中に浮く。 その不気味な光景に、見ていた生徒から短い小さな悲鳴が漏れる。 まぁ、そんな光景を見たらそりゃ当然だろう。 「まったく……誰が魔導書無しで魔法陣が使えないと? 魔法陣無しで、私が強力な魔法を使えないと言ったのかしら? 貴方達、私を舐めすぎよ」 手首から先が無い腕を出すと、そのまま落ちた手をつなげる。 通常、切りおとされた手をつなげるためには、上級レベルの回復魔法が必要となる。 というか、通常外科手術の上に回復魔法を使用しなければ、体を繋げる事は出来ない。 普通なら。 だがエルはそんな事をせずに、直接魔法で手を繋げる。 神経などをすべて誤差なくつなげなければならない他、筋肉、骨なども一切の誤差なくつなげなければならない。 だが、そんな事もお構いなしに、彼女はそれをして見せた。 落とされた手の指を、感覚を確かめるように動かす。 手首には、血がついたままだ。
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