うのうぇn。貴方は何の為に?

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その光景に思わず目をつむるビーチェとシルノ。 ヘルは慣れ切っているのか、つまらなさそうな眼でその光景を眺めていたままだ。 流石に知っていても、目をつむりたくなる画だ。 下手をすれば真っ二つだから。 目の前で人間が真っ二つになるのは、どうも精神衛生上宜しくは無い。 尤も、彼女がそんなヘマをする訳がないが。 幾分かの時間がゆっくりと流れる。どうしてこうも、脈拍が速くなるような映像の場合は、時間がゆっくりと流れるように錯覚するのだろうか? 全く人間というのは度し難い。 ようやく、エルへと直撃。 その余波は講堂の埃を巻き上げ、エルが居た場所を陥没させた。 自信満々だった男の表情が驚愕に歪む。さっきから忙しい奴だ。 「まったく、こんな玩具で私が仕留められると思われるなんて……ほんっと、安く見られたものだわ」 悠々と杖を持っていない方の手、つまりさっきくっつけたばかりの手で、その風の剣を受け止めていたのだ。 手の平に傷一つ負っていない。 なんと言う事だろうか。まったく、つくづく化け物じみている。 こんな芸当をやってのける人なんて聞いた事も無い。 頬をひくひくと痙攣させながら、シルノは呟く。 「……本当にあんたの主人って馬鹿よね」 「……本人に言っても褒め言葉として受け取られますよ」 どうやらヘルも呆れているらしい。 全く馬鹿馬鹿しい。 「どっこいしょーいち」その掛け声と同時に、風の剣は掻き消された。 エルが「握り潰した」んだ。 風で出来た剣を。 なんの造作もなくただ単に握力を加えただけ。 それだけで潰してしまったのだ。 「さて、お仕置きをしなくてはね」 彼女はそう言うと、杖をまた一振り。
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