うのうぇn。貴方は何の為に?

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別にやる必要性は無いのだが、そうした方が絶対にそれらしくみえるからやるだけだ。 魔導書を持っていた従者の体が、瞬時に氷の中に閉じ込められる。 足下には魔法陣が。 人混みの中に居た筈なのに、ピンポイントで彼だけを狙ったエルは、すごいというべきなのだろうか。 パチン。指を鳴らすと同時に、従者の体が砕け、崩れ落ちる。 粉々に。跡形もなく。 どうやら、一瞬で体内の水分ごと凍結させたらしい。 普通、体の周りに氷があると言ったら、体内は幾らか無事だったりするのだ。 今のような一瞬の出来事の場合は特に。 だが、彼女は違った。一瞬で体内の血液から何もかもを凍らせたのだ。 先程は骨も残らず灰にされ、今度は完全凍結した後に粉砕……。 やる事がえげつなさすぎる。 相手に恐怖の感情以外が芽生えさせないような殺し方だ。 「さて……次は誰が贄となるのかしら。ああ、逃げたいのならご自由に。この私から逃げ切れる自信がある、お馬鹿なナルシストは」 エルはそう宣言する。 つまり、逃げる事は出来ない、此処で皆殺しだ、と言っているらしい。 どっちが悪役なのか、分からなくなってきた。 皆殺しに来た筈なのに、皆殺しにされるなんて、そんな馬鹿な話があっていい訳がない。 返り討ちにあった、なんてレベルの話では無い。 エルはそう宣言したまま動かない。相手が動くのを待っているのだ。 本当に玩具で遊んでいるかの様に見える。 反逆の代償というのは、いつでも大きいものだ。 彼らも彼らとて、薬物によって強化されていた筈なのに、この圧倒的差を知ってきっとこう思っているだろう。 「やらなきゃよかった」と。 後悔先に立たずとは、彼らに相応しい言葉なのかもしれない。
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