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エルが今何をしたのか、それは風魔法を使用したとだけしか言いようがない。
細かな風の刃を大量に作り出して、全身を切り刻んだのだ。
それこそ、フードプロセッサーにかけた食材のように粉々に。回転させてないが。
野菜をミキサーにかけて作る飲み物の事を青汁というが、だったらこの液体はなんと言うのだろうか?
紅汁とでもいえばいいのだろうか?
飲み物でないのに、そんな名前をつけてどうするのかはさておき、シルノとアイラの状況が宜しく無くなった。
囲まれている上に、アイラは既に放心状態に陥っている。
まぁ凌辱された上に、その直後に真っ赤なシャワーは堪える。
シルノはなんとか逃げようという意思はあるものの、こちらもやはり先程のシャワーの所為で、半分放心状態だ。
飢えた狼の群れの中に、羊が放り込まれている状況というのは、非常によろしくない。
ほら、あっという間に食べちゃおうと飛びかかられてしまう。
クライアントの娘を殺す訳にもいかない。
「まったく。もう少しは慎みというものを覚えて貰いたいわね」
どの口がいうのだろうか。
慎みを持った方がいいのは明らかにエルの方である。
最早、辱めようなんて気分でもないだろう。と、言うよりもその余裕がない。
ただ、二人の息の根を止めようと実に様々な魔法が降り注ぎ、剣が振り下ろされる。
が、そのすべてが防がれる。
エルは一歩も動いていないし、魔法も使っていない。
全ての攻撃を防いだのは五十二枚のトランプだ。
「まったく……二人ともそこでじっとしていなさい」
エルはそう言うと、ゆっくりと二人の方へと歩き始めた。
杖なんてもう邪魔以外の何物でもないので、そこら辺に放り捨てる。
どうせ安物の木材で作った紛いものだ。幾らもする物でもないし、ましてや愛着がある物でも無い。
本当に大切な物をこんな下らない事に使ったりはしない。
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