うのうぇn。貴方は何の為に?

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欠伸をしながらまるで散歩でもするかのように、エルは歩いて行く。 手を出せば確実に、殺される。 彼女の行く道に立ってもそれは一緒。 大人しく道を開いて行く。 びびっているのだ。完全に。 どうするか。目の前の脅威を排除するか、回避するか。 恐らく束になってもかなわないだろう。 だが、逃げるとしても何処にだ? 逃げる場所なんて無いし、拠り所が無い。 一矢報いるがあったとして、彼女の前には無意味だ。 すべて壊される。 男達は何もしないまま、彼女の道を作る事しか出来なかった。 「血気盛んなのは良いけど、この位の事で腰抜かさないで。正直、足手纏いよ」 真っ赤な二人の前に立って手を差し伸べてそう言うエル。 「煩いわね。見てただけのあんたよりはましよ」 その手を取ることなく、彼女は立ち上がる。 隣にいる少女は未だ呆けたまま、呼吸を荒くしている。 過呼吸に陥っている訳ではなさそうだが……正直この位で息を荒くするのは鬱陶しい。 エルからすれば甘えに等しい事だろう。 「何を呆けているの。さっさとたちなさいよ」 「あんたね、私がこうやって普通にしていられる事がおかしいのよ? この子がまともでいられる訳がないじゃ無い」 「昼間、散々魔法使いながらお前達を追いかけ回していたのに? 因果応報ね」 「煩いわね。私だって立っているだけで膝が笑ってそう簡単には動けないのに」 「高々、血の雨浴びたくらいで情けないわ」 「あんたは専門でしょうが」 「私の専門は魔法を科学する事ですわ」 「……どうでもいいわ。とにかく私達を護ってよ」 「嫌と言ったら?」 「言えないわね、貴方は」 「やれやれ……血は争えないわね。あの子に似て、厭らしい考えを持っているわ」 聡いというか賢しいというか。 まぁ、友人を助ける為に飛び込んで来たのは褒めるべきだろうか。
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