うのうぇn。貴方は何の為に?

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後先考えないのは、やっぱり若いからだろう。 一応は考えていたみたいだが、それはあまりの博打だ。 エルが自分を助けてくれる可能性はそこまで大きくはない。 これは断言できる。 もしエルが助けなければ、今頃首を飛ばされているか、慰み者になっていた事だろう。 「……ったく、お前はあいつとは違うみたいだな」 「お母さんの事? 生憎だったわね。私は私なのよ」 ふふん、と自慢げに鼻を鳴らすシルノ。 やれやれ、本当にこいつの血は争えない。 遺伝という言葉はやはり存在するらしいな。血統程度では判断したくはないが。 所で忘れて貰いたくない事が一つだけある。 此処が、敵のど真ん中であるという事を。 「さて、じゃあ私はお掃除の続きをするわ。あんた達は戻ってなさい。向こうに着くまで、そのトランプが護ってくれるから」 エルはそう言うと、まるで猫でも追いやるかのように手を振りながら移動するように急かす。 「待って、この子がまだ動けないみたいだから……」 アイラをみながら、シルノは言う。 彼女は未だに息が荒いままだ。 「全く、ここにいるだけでも邪魔だってのに。片付けも出来やしない」 「うおぁあああぁぁぁああ!」 溜息を吐いてエルがそう言うと、一人の男が剣を振り上げてつっこんで来る。 無謀すぎる。 エルが何か行動するよりも先に、床が動いた。 その刹那、本を折りたたむかのように床と床の面が合わさり、男の体は押し花にされるかの様に、潰された。 全身、くまなく。ぺっちゃんこにされてしまった。 だが、床が折りたたまれたのは一ヶ所だけでは無かった。 もう一ヶ所、誰もいなかったような場所が折りたたまれたのだ。 両方から血が飛び散る。かなり勢いよく閉じられたからだ。 きっと開いたら目も当てられないような状態になっているのだろう。 飛び散った鮮血で、白いドレスを染めながらエルは言う。 「玉砕必至で攻撃を仕掛けて注目を集め、その隙に不可視の魔法を使用して私を殺そうという、その作戦は褒めてあげる。でもね、私には通用しないのよ。そんな子供だまし」 宣言した。これだって最良の策だったはずだ。 それをあっさり打ち砕いてくれるとは。
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