うのうぇn。貴方は何の為に?

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すぐさまそれの準備にかかる。立ち止まって、息を整え、体中に魔力をいきわたらせる。 先程まで全身から溢れていただけの炎が、どんどんと彼の体の周りにだけ集まって行く。 今まで不安定だった炎が、安定していく。ゆっくりとファイの体にまとわりつき、徐々に形を整える。 そして、ファイの体に今までなかった防具が装備された。 防具、というには余りにおかしな格好だ。それに先程までの行動を見ていると、本当にヒーローを見ている気がする。 炎によって彩られたファイの体。腕、肩、胸部、背部、足に炎を纏っている。 ただ、全身を覆う装備では無いので、二の腕や腹部、太腿の部位には装備されていない。 これは機動性を落とさない様にするのと、無意味な魔力消費を抑える為の趣向だ。 右手には刀、腰には鞘が装備されている。 中世の騎士のようだが、その手に持つのが刀であるのが、なんとも滑稽に映る。 一方、ファイと使い魔が「変身」をしている短い間、ビリーはビーチェと会話をしていた。 「どうして? そんなのを俺に聞くのか?」 「ええ、聞くわ。貴方が私を裏切るのに理由はある。でも、こんな事をする理由が分からないの」 彼女に自覚はあった。自分が至らない主人であるという事くらいは。それで彼を苦しめている事くらい。 「だったらどうして貴女は止めなかったんだ」 「……私は、怖かったのよ」 貴方の事が。貴方に惹かれる私の心が。 「怖かった? 一体何が! 普段から我儘で自分勝手で……怖いものなんて何も無い様だったじゃないか!」 吼える。止まらない憎しみを吐きだして行く。 「貴方は良い従者だったわ。私は、貴方の事を信頼していた」 その心は変わらない。決して。だから冷たく当たっていた。 「信頼? 巫山戯無いでくれよ。だったら何であんな事ばかりしたんだ!」 「冷たく当たったのは、貴方に、私の元から離れて欲しかったからよ」 「離れる? 俺は離れたくなかった!」 「どうして!」 「君の事を愛していたからだよ、ベアトリーチェ!」
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