うのうぇn。貴方は何の為に?

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息が詰まる。衝撃の言葉だった。 彼女には重すぎる言葉だ。愛だなんて……。 「俺はただ、貴方の傍にいたかった! それだけなんだ! それだけなのに、貴方は俺を突き放して、遠くへ追いやって……!」 苦しそうな表情で言葉を発するビリー。 胸の内にある、想いを吐露しているのだから無理もないだろう。 今まで秘め続けてきた想いだ。 「俺は貴方を欲しいとは思わなかった。分不相応と分かっていたから!」 大仰なしぐさでそういう。 「それを分かっていたから、俺は君に伝える事は無かった。僕の欲望は君の傍にいられるだけで十分だったから。だけど、それすらも出来なくなった。僕のささやかな願いすら叶わないというのなら……」 一瞬だけ柔らかくなった彼の表情が、再び険しくなる。 「ウバエバイイダケダヨナ」 狂ってる。どうして狂ってしまったのか? 誰の所為か? 誰の所為? 分かっている自分の所為だ。 向けられる銃口。それを避けるだけの気力がない。 避けろ、頭では理解している。避けて、止めろ。 このまま自分が死ねばそれで終わるのか? その確信が何処にある? どこにもないだろう。 そのまま誰かを殺してしまう事だってある。 あの二人が止めてくれる? そんな他人にすがってどうする。 私はアリギエーリの娘だ! 動け! 動いてあいつを止めるんだ! 引き金を絞る指が見える。眼を見開いたままだ。眼も瞑りたくなる。 それでも眼は見開いたままだ。眼を瞑った瞬間、それは敗北だから。 銃弾が銃口から現れる。 それすらも見える。時間がゆっくりと流れているのだろうか。 だとしたら死ぬのかもしれない。 走馬灯とか言うのだろう。 自分の眼前にまで弾が向かって来た。
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