うのうぇn。貴方は何の為に?

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拳銃を無造作にビーチェに向ける。鈍く輝く銃口が、高ぶる感情を放とうとしている。 手は震えていない。こんな時に至ってまで、体は正常に動くとは、何とも言い難い悲しさがある。 唇をかみしめ、ビーチェは向かいくる弾丸に備え、腰を落として魔力を高める。 銃弾は銃口を出て、まっすぐにしか飛ばない。 変化を付ける事は可能だろうが、流石にこの短距離で障害物を避けて、目標に命中させるのは不可能だろう。 つまり直線でしか来ないということ。 良く見ろ! 銃口は何処を向いているのか! 引き金が引き絞られるその瞬間まで、ビーチェは目を離さない。 彼の暴走を引き起こした原因が自分なら、それを引き留める役目も自分だ。 自分の事は自分で決める! せめて決着は、自分の手で。あの子の幕を引くのは私の役目。 「消えろぉぉぉぉ!」 引き金が振るえる指で、トリガーが引かれる。 爆発音とともに銃弾が銃口から吐き出された。 その数瞬の内に、彼女は銃弾の軌道を予測してその一点に魔力を集中させた。 そして、それに銃弾は直撃。 小規模だが、銃弾の軌道を逸らすには十分な威力だ。 当然彼は驚き、動きを止める。 その隙に彼女はすぐさま懐に潜り込んだ。 今なら、ビリーに止めをさせるとそう判断したから。 どんなに熟練した魔術師でも、ゼロ距離での魔法を防御する事は難しい。 絶好のチャンスだとでも想ったのだろう。事実、通常ならばこの手段は、定石中の定石というべきだろう。 刺し違える覚悟で行くのなら、この位は当然だろう。 ファイであっても、リオンであったとしても、同じ手段を取るだろう。 だが、彼は強すぎる。 未だ子供だというのに、その実力は強すぎるものだ。それに追加して薬の効果もある。 今の彼には戦闘反射、とでも言うべき能力が備わっている。 つまり、自分に対しての攻撃意思があるもの全てを、本能的に攻撃するのだ。 それこそ、感情に左右されずに。
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