うのうぇn。貴方は何の為に?

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「違うな! 俺は俺の思う儘に戦っているだけだ! そこに運命だとか、そんなもんは存在しない! 運命なんて言葉は切り伏せねじ伏せるためだけにあるんだよ!」 「運命なんてそんな簡単に変えることが出来る訳がない!」 「いいや出来る! それから逃げただけのお前にはわからないだろうな! 自分の意思だけで生きてきた人を、俺は知っている!」 「そいつは頭がどうかしてたんだな、きっと!」 「運命って言葉に逃げている君には解らないだろうな! 総てを運命の所為にして! 総て投げ出して! ただただ流されるまま此処にいる君には!」 「流される事の何処が悪い! 流されるだけの方が楽なんだ! 流れに逆らって、生きるだなんて!」 「お前は今逆らっているじゃないか! しかも一番最悪な方法で!」 「五月蝿い煩いうるさい! 運命に負けたことも無い癖に! 知った風な口を聞くなっ!」 「選択肢しか選んでいないお前には絶対に分からない世界だ!」 目の前に提示される選択肢以外の行き方を知らない彼には、到底理解できない世界だろう。 目の前に提示される選択肢を選ぶことは一見すると、悪いようには見えない。 いや、正しいことなのだろう。間違いではない。 だが、目の前に提示された選択肢だけを選んでいるのでは、所詮ゲームの世界と一緒。 世間一般では下らないと卑下されるそれと大差ない。 現実にも選択肢はある。ただし、ゲームのように限定されたものではない。 提示されない代わりに、どんな選択肢もある。 言葉の組み合わせ次第では、無限の可能性を秘めている。 「選択肢なんてものは限られる!」 「いいや、違うね! 解釈の程度によって、複数に増える!」 「戯言を!」 互いの刃が肉を裂く。そこから溢れてくる血を拭う余裕もないまま二人はまた刃を合わせる。 次第に戦闘での疲労が苦痛ではなくなってきた。 脳内麻薬が分泌されているのだろう。 徐々に痛みすら快楽に変わってくる。 呼吸をしなくても、体が縦横無尽に動く。 この全能感がたまらない。
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