うのうぇn。貴方は何の為に?

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「……ッはぁ……ッハ……」 ビリーが倒れた直後に、ファイもまたその膝を、ボロボロになった床につけていた。 炎の鎧は、その力を失い、形を失くす。 刀を地面に突き立てて、何とか上体が倒れるのを何とか支える。 息はもう切れかけ。肩で息をするなんて表現ではなく、肺そのものが酸素を求めているかのようだ。 口で呼吸をしているのではない。 肺で呼吸をしている状態に等しい。 魔力は本当に無い。完全に空っぽの状態だ。 それだけでなく、全身の肉と骨が悲鳴を上げている。 先程、装備したあの炎の鎧。あれには身体能力を飛躍的に上昇させる効果がある。 魔力による、筋力の活性化だ。 だからこそ、薬で身体能力が強化されているビリーに追いつけるような動きが出来たのだ。 だが、しかし当然副作用はある。 身体能力を飛躍的に強化する代わりに、身体への負担がかなり大きくなる。 おそらく今のファイの体ではしばらくの間、立つ事もできない無いだろう。支えがあるとは言え、上体を起こしているだけでも、凄い事だ。 普通なら、全身に力が入らなくて倒れてしまってもおかしくは無い状況だ。 地属性魔法にも同様に、身体強化魔法は存在しているが、それとはまた原理が異なる。 詳しい説明は省くが、内側から強化するのか、外側から強化するのかの違いだ。 酸欠で掠れゆく意識の中、ファイはかすむ目でエルを見る。 「は……ははッ……ど、どうですか……勝って、やりましたよ……!」 途切れ途切れの声で、ファイはそういう。微笑みながら、宣言した通りにしてやったことに対して、彼は言う。 強かった。 本当に強かった。
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