うのうぇn。貴方は何の為に?

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全力なんてもんじゃない。 まさに全身全霊をかけた戦いだったといえる。 刀も刃毀れが凄まじい。幾ら自然修復が出来るとは言っても、これでは何週間かかることやら。 何時ぞやの、飛竜と戦ったときとは比較にならない。 周囲では死闘の名残である、炎が赤々と燃えている。 その光景を目にしながら、彼はその意識を手放した。 「……やれやれ、相変わらず無茶をするなぁ」 溜息を吐きながら、エルは一人呟く。 防護魔法の中に居る、シルノは何やら暴れているが、ヘルに抑えられている。 どうやら、敬愛する兄が倒れたのを見て、黙っていられないのだろう。 シルノという少女はこんなやつだったか? なんて疑問に思いながら、エルは残った少年たちを振り替える。 今の今までずっと、彼らに背を見せ続け、孫の戦闘を眺めていたのだ。 なんとも余裕があることだ。 敵に背を向ける事が、どれほど危険であるか位分かるだろう。 戦場でそれをするという事は、すなわち死に直結する。 尤も、彼女に限ってそんなことはありえないので、どうでもいいこと極まりないのだが。 「さて、ではそろそろお片付けと行きますか」 彼女のその言葉が響くと同時に少年たちの体が跳びあがる。 その言葉の意味は、すなわち皆殺し。 生き残るものなど一人も居ないということだ。 玩具は全て箱の中。ゴミ箱という名の箱の中に捨てられる。 遊びたいだけ遊んで、壊れたらゴミ箱へ。 それが玩具の宿命だ。 「待て、エル!」 どうやって殺そうか思案している彼女の耳に、今まで完全に忘れ去られていたヴァンから、制止の声がかかる。
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