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納得する。模擬戦の時に彼が大剣に対して恐怖した理由が。
どうせ、模擬戦とでも称して殺されかけたのだろう。
ようやく理由が分かった。
「そういえばファイは!」
はっと思い出した風に、エルに詰め寄る。
「ああ、あの子なら。ちょっと頑張り過ぎでね。病院行きよ」
こともなげにそういってやると、カレナは途端に顔を青くした。
「何ですって! ファイは! ファイは大丈夫なの!」
彼女はエルの襟首をつかんで、今にも絞め殺しそうな程に力を入れる。
「ちょっ、苦し……!」
「落ち着けお嬢ちゃん。喋れないから」
そういいながら、ヴァンは正気を失いかけているカレナをエルから引き離す。
「げほっ、ったく。あの子なら心配ないわ。肉体と魔力の酷使でしばらく寝たきりでしょうけど」
本当に無茶をする奴だ。
あの状況で、炎の鎧を作り出すなんてどうかしている。
昔はああいった事も出来たが、最近ではもう忘れ去られてしまっている。
やはり肉体強化のほうが、より効率的なのだろう。
ウルカヌスに教えてもらったのだろう。それに付随して、使い魔の力もつけたのだろうか。
なんにせよ魔力をやたらと使用して、肉体に多大な負担をかけるものである事には変わりない。
そうでなければあの瞬発力、あの火力は実現できないだろう。
身体強化は地属性魔法の一つだが、筋力をアシストするためのものであって、筋力そのものを強化するわけではない。
その点が肉体に与える負荷の差だろう。
強化外骨格、パワードスーツを着ていて肉体を痛めたら本末転倒だ。
「そんな……そんな事になるなんて」
「あいつの相手が異常に強かったのよ。今回の相手はドーピングまでしていたみたいだし」
「ドーピング? 薬物まで使っていたって言うの!」
「そ、お陰さまで腕を切り落とされて大変だったんだから」
「腕って……」
あきれた風にカレナはエルの腕を見る。
「勿論くっつけたのよ。当然報復として何人かは跡形も残さず消し飛んでいただきましたが」
恐ろしいことを平気でさらっと言う。
「ほら、早く病院に行って来なさい。しばらくは、筋肉痛で指も動かしたくないでしょうから」
クスクスとカレナの心中を読んでいるかの様に笑うエル。
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