うのうぇn。貴方は何の為に?

73/73
前へ
/617ページ
次へ
全くどうして彼女はここまで魅惑的な微笑みが出来るのだろうか? ヴァンだけでなく、同性のセレナすら見惚れてしまったでは無いか。 そうして、エルは翼を作り出す。 純白い翼だ。まるで新雪のような、美しい翼。 真紅に染まったドレスとはアンマッチだ。全くあっていない。 つけるのだとしたら、悪魔の翼だろう。 「まて! 貴方はまさか!」 「ふふ、変な勘繰りは止して下さいな。私は女ですよ?」 彼女はそういうと、翼を羽ばたかせて空へと舞い上がる。 当然、周囲の注目が集まる。 そりゃ、背中に翼をつけるなんて事が出来る人間なんてそうそういない。 当然、見世物になってしまう。 「ではセレナ・リコ・ヴェルトールさん。不出来な兄弟弟子ですが、よろしくお願いしますね」 エルはそういい残すと、そのまま飛び去っていく。 翼を大きく羽ばたかせて。 その姿はまるで天使のように見えるが、彼女の残虐さを知っているヴァンからすれば、死天使のように見えた。 そう、神への反逆者を殺す能天使、エクスシアに。 どこか釈然としないままだったが、どうせ彼女に関して探っても何もでてきやしないだろう。 それに、探る理由も無い。 わざわざ危険を冒す必要も無いのだが…… 「ヴァアァァァァァァァアアアアアアンンンンンンンン?」 彼のすぐそばに、恐怖は存在していた。 「さっきはこんな美人で博識なお姉さまに向かって酷い事を言ってくれたわねぇ?」 鬼の形相でヴァンに迫る、セレナ。 「え? あ、いや……」 冷や汗しか流れない。 「調教してあげるわ。ふふふ、覚悟なさい?」 どこと無く淫靡な響きだ。 だが、彼には死刑宣告以外の何物でもない。 その後、女性の高らかに笑う声と、男性の悲鳴が木霊する事になるのだが……。 生憎とこの場から離れてしまったファイたちが知ることは無かった。 永遠に。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加