小さな小さな子犬ちゃん

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その日はようやく秋の訪れを感じることが出来る日だった。 日差しはそれほど強くなく、吹く風もどこか冷えてきている。 もうじきに冬が待っているぞといわんばかりだ。 しかし、その前に秋! 秋にはやるべきことがたくさんある。 それは何か。そう、それこそは食欲! 食欲の秋! 食い意地を張るべき季節となったのだ。 大地にはたくさんの木の実が、生き残りをかけて果実を実らせる。 そのおこぼれにありつこうというのだ。 まずはお米! 何よりも主食たる米を食べなければならない。 新米を食べなければ秋になったという気がしないだろう。 古米と比べて若干水分が多いので、料理に手間がかかるのだが、それを食する快感というのはなんともいえないものがある。 口の中でまるで、プチプチとつぶれる食感。それでいて、噛めば噛むほどに甘みが出てくる。 これは唾液とでんぷんが混ざり合うことによって、糖に変わっているからだそうだが……。 そうでなくとも、ほんのりと甘い。それでいて、新米は香りが良い。 まさに主食というに相応しい食材だろう。 そして、次に魚! この時期に旬の魚といえば、鮭だ。 卵に白子、そして身に到るまで。全てをとっても実に上手い。 川で生まれて海へ出て、そして再び川へと戻ってくるこの魚は、一見すると赤身のように見えるが、実は赤身魚ではなく白身魚である。有名な話ではあるが。 焼いてよし、生でよし、煮ててよし、燻製にしてよしという素晴らしい食材だ。 更に、鮭の卵であるイクラは少しだけ塩などで洗い流し、ご飯の上に乗せて食べると実に上手い。 醤油に漬けて食べるというのも良いだろう。 もったいない使い方ではあるが、これを使って更に大物を釣り上げる、なんて夢を持っても良いかもしれない。 鮭の身はそのまま刺身にしても良いが、サラダにしても良いし、脂の乗り具合で実に千差万別な食べ方が存在する。 だが、そんな中でも、一番素材の味を生かしきれている料理方法は「親子丼」だ。
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