小さな小さな子犬ちゃん

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とにもかくにも、だらだらと長いこと食べ物の説明というか紹介をしてきたのだが、ようは何が言いたいのかといえば……。 「ふんふんふふふんふうふふん」 陽気に鼻歌を歌いながら歩いているファイが、ただ単に食い意地が張っているだけなのだが。 スキップでもしそうな程に彼の顔はにやけている。 そしてその手には大きなビニール袋が。中には一体何が入っているのだろうか。 最近は寒くなってきたので、温野菜でチーズフォンデュを作っても良いだろう。 それとも普通につみれ鍋を作るのかもしれないが。 だが、答えは明確に出ている。 簡単だ。何せ彼の手に持っている袋からは、尻尾が出ているのだから。 魚の尾びれがしっかりと。 手に持っている袋のサイズからして、かなり大きな魚であることは言うまでも無いが、一体何の魚か。いや、問うまでもない。 「今日の晩飯は鮭! しっかも丸々一尾だい!」 やたらとハイテンションだ。 普段のファイからは考えられない。 非常に子供っぽい。 なんというか、やはり人は好物を目の前にすると理性を失うというのだろうか? だから食い物の恨みは恐ろしいのだろう。 美味い食べ物というのには、麻薬に似た力があるのだろう。間違いない。だって、美味いものを食べたら、それ以外口に入らなくなってしまう。 贅沢ってのは体にとって最大の毒らしい。 とはいっても、贅沢をしない人生なんて退屈極まりないものだ。 実に退屈極まりない。人は贅沢をするために生きているといっても過言ではなく、また、人は面倒くさいから便利な道具を作るのだ。 だから、楽しいのだとファイは思う今日この頃である。 周囲の空気は秋でも、彼の頭の中はもう春らしい。 ともかく、今日は鮭尽くしだ。
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