小さな小さな子犬ちゃん

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ファイの鮭好きは今に始まったことじゃない。 そもそも、キリエが大好物だったらしく、週に一度のペースで食べていたらしい。 そして、鮭を食べる日は異様にテンションが高かったらしい。 そしてそれは見事にファイに遺伝している。 部屋に戻ってきたファイはすぐさま台所に向かい、鮭をさばき始める。 丸々一匹、といったのは、本当に丸まる一匹なのだ。しかも鮭の性別はメス、つまり……。 「イクラが大量だぁ!」 腹に切れ目を入れて、イクラを取り出す。 うん、たっぷりしっかりと卵巣内に入っているイクラを見ると食欲がそれだけで増してくる。 その全てをしっかりとボールに移すと、身を捌く。 頭を落として三枚におろすことにした。塩鮭のほうが焼くときは美味しい。 当然、彼の晩御飯は親子丼なので、皮を剥いでおく。 一人暮らしでこの贅沢をするためだけに、この包丁捌きを覚えたのだ。 しっかりと身を無駄にしないように、皮をはぐとサーモンのブロックが完成した。後は薄く切り分けるだけだ。 この刺身にするときの厚さが問題だ。 焼肉にしてもそうだが、分厚ければ美味いというわけではない。 きちんとした厚さに切り分けなければ、美味しい刺身は生まれない。 ここの加減が、非常に難しいのだ。 尤も、個人の好みがある為、厚く切ったりするのだが。 なんにしても薄すぎ、厚すぎは食材の味を損ねる危険性がある。 まぁ、刺身にする作業は後に回しておこう。 トレイに皮を剥いだ身を入れるとラップをしておく。 少しでも美味しい状態にしておきたいのだ。ラップをかけたからどうと言う訳ではないのだが。 次は腹子の処理だ。 このまま筋子として食しても十分に美味いのだが。 やはり、イクラとして食べたいところだ。
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