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落ち着いた雰囲気の店内には優雅な弦楽器の音色が響いている。
そんな中、周囲の眼をはばかりながらファイ達は囁くように話し合う。
「リオンはいたか?」
「いないって言っているだろう、ワルキ。さっきから何度聞いて来るんだ」
「だってよ、気になるじゃないか。あの「リオン」がだぜ?」
初めて来る憧れの場所と、好奇心で幾らか興奮しているワルキはファイにそう言う。
なお、今回のメンバーの中で唯一貴族の生活とは縁遠い人物である。
ピアナは、本名をピアニシモと言って、かつて貴族だった人物である。
現在は色々とあって、カレイネル家の使用人として働いている。
「分かったから落ち着けって。全く、お前は緊張すると落ち着きがなくなるタイプだな……」
緊張すると思考が固まるファイとは正反対である。
「仕方ないだろ。お前と違ってこっちは庶民なんだからな」
ワルキの皮肉には溜息を吐くしない。
実際、家が大きいだけで大差ない生活をしているのだが。
「まぁ、仕方ありませんね。私だって驚いていますもの。あのリオンさんが自分から率先して女性に声をかけるなんて」
冷静にそう言うのはピアナ。
ワルキも、彼女くらい落ち着きを持ってくれたらいいのに、と切に願うファイ。
実際、メイドとしての仕事をてきぱきとこなしている姿は、非常に凛々しい。
なんと言うか仕事のできる女性、という雰囲気が全身から溢れている。
とは言っても、まだ彼女もうら若き乙女。
年相応の無邪気さや茶目っ気を持った一面も見せる。
ファイの家にもメイドはいるのだが……。
これが完全無欠、と言った風で、仕事なら何でもできる。
なのに、恋愛事となると途端に少女時代に戻ってしまう、と言うなんとも可笑しな女性だ。
ピアナの目標が、その女性だったりもする。
「学校なんてどうでもいいなんて感じているあいつの事だもんね……」
顎に手を当てて、考えるように言うのはカレナ。
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