小さな小さな子犬ちゃん

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新聞の勧誘も宗教の勧誘もこないので、非常に助かるというもっぱらの話だ。 そのあたりの感覚は貴族であるファイには良くわからないが。だって家にそんなのが一度だって来た事がないのだから。 こういった面ではやはりお坊ちゃまなのだろうか。 「よう、ファイ」扉を開けたそこにいたのは、友人のワルキだった。 「ワルキじゃないか。珍しいなこんな時間に」 「ちょっとな。相談したいことがあって……」 あさっての方向に視線を向けてワルキは言う。 「ははぁ、さてはピアナのことだな?」 「ちょっ! 違うわ!」 慌てた風にそういってファイの頭を平手ではたいた。 「って! 図星突かれたからって……ありゃ」 そういってから気がついた。 彼の隣にメイド服を来た少女が立っていたことに。 「ピアナまでいるってのも珍しいな。本当になにがあったんだ?」 この二人がそろっていることなんて本当に珍しい。 というかワルキがこういうことに関しては奥手な所為で、二人きりになる時間なんてめったに無いはず。 普段から積極的に誘っていければ、もう告白しても良いんだろうが……。この臆病な少年はそれが出来ないのだ。 「いや、まぁ、ちょっと、その、あれだ。とりあえず中に入ってから……だな」 どこか歯切れの悪い返答だ。ワルキにしては随分と珍しい。 恋煩いでなければ一体何の用なんだろうか。 ふと、ちらりと下を見ると、二人の間に挟まれるようにして、一人の男の子が……。 「おまっ! ちょっと待て! そういったことは俺じゃなくて先生に相談に行け!」 大声で叫ぶファイ。 慌てふためいてワルキは強引に中に入り込んだ。 周囲からは他の寮生たちの視線が集まってしまったのだ。 只でさえ厄介な誤解を生む覚悟でここにきているのに、その人数が増えて堪るか。 まぁ、といってもファイの部屋に入り込んでしまった以上、またあいつらか、といった空気なのだが。 「で? その子は誰なんだ? まさか本当に作ってしまったとか?」 「それマジで言ってんだったら殺すぞ」
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