小さな小さな子犬ちゃん

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とりあえずどうしたものか。 この子の家が判らないままで、放っておくわけにも行かない。 このまま寮に住まわせるわけにも行かないし、仮に孤児だとしても、この格好はおかしい。 随分とまともな服を着ているのだ。 汚くはないし、生地だってまともなものを使っている。 それに、髪の毛が汚れていない。 ファイの家は半分孤児院になっているような物だから、よくわかる。 ということは……一体どういうことなのだろうか? まさか、この歳で家出という訳でもないだろうし。 だとしたらどれだけませているんだこの子供は。 とりあえず、質問を更にぶつけてみなければ。 「君は一体何処から来たの?」 返答、沈黙。 「君は何歳?」 返答、沈黙。 「君のお父さんとお母さんは?」 返答、沈黙。 「迷子になっちゃったのかな?」 返答、沈黙。 「もしかして、家出したの?」 返答、沈黙。やや顔色に反応あり。 「どうして、この二人についてきたのかな?」 「……優しかったから」 珍しく回答をした。成程、優しかったから、か。 「じゃあ、どうして警察に行かないのかな?」 返答、沈黙。 「君は何処からやってきたのかな?」 返答、沈黙。 これまで幾つか質問をしてきたが、流石にこれ以上は何を質問したら良いか。 考えられる一般的な質問はぶつけてみたが、流石に思っていた通りの回答は得られなかった。 ただ、不確定ではあるが、家出をして来たと言う可能性は十分に存在している。 迷子にはなっていない、と思う。誰かとはぐれた訳でもないように思える。 が、それでもやはり幾つか判らない所がある。 三人が額を寄せ合って、考え込んでいると、景気良く扉が開いた。 「よーう、ファイ。何か面白いことが起きたんだって?」 飛び込んできたのは、毎度お馴染みトラブルメーカーのリオンだ。
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