小さな小さな子犬ちゃん

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ヘルはリオンの頭に拳骨を落とすと、ロウの背中を押してジェンの元に向かわせようとする。 「で、でも……」 リオンの事が気になるのかロウは彼のことをしきりに見ている。 なんと言う忠誠心だろうか。 「ああ、気にしなくて良いぞ。主には私から言っておくから」 それを聞くとロウはすぐに行ってしまった。 その後姿を見て、リオンが唸ったのは言うまでもない。 「……」ファイはその光景を眺めて思った。 また面倒臭い事になってしまった……。 「で、何のようなんですか。本当に。邪魔しに来たんならヘルとロウだけおいて帰ってください」 「俺って要らない子!?」 「ええ、非常に要らない子です。ですから、役に立たないのならすぐさま出て行ってください。邪魔ですから」 「最近俺の扱い雑になってきてない?」 「慣れたと言ってくださいな」 こんな馬鹿に取り合っているよりも、すぐさまジェンの他所を考えなければ。 「……ったくよ。折角この国で獣人なんて珍しいもんが見れたと思ったのによぉ……」 ぶつくさとそう呟いて帰ろうとするリオン。 その言葉の中にあった単語にファイは驚く。 「待ってください。何ですかその獣人って」 「あ? もしかして俺余計なこと言ったか。しまった……知ってるもんだと思っていたからな」 「どうでも良いですから!」 リオンは溜息を吐くと、ジェンの所まで歩いていく。 「君、その帽子を取ってくれるかな?」 リオンはそう言いながら、かがみこんだ。 ロウは若干おかんむりだ。 「……やだ」 「どうしてかな? 部屋の中では帽子を被るのはおかしいことなんだけどな」 やさしげにそう問いかけるリオン。 流石は二人の子供を育てた大人だ。 それでも頑なに帽子を両手で押さえつけるジェン。 そんな彼の行動をみて、リオンは微笑む。 「当てて見せようか? その帽子の下には可愛い可愛い耳がある。ちっちゃくて可愛いお耳がぴこんと二つ生えているんだ」 それを聞いて更に体を固くするジェン。 怯えさせてどうする、と言いたかったが、ここは経験豊富なリオンに任せたほうが良いのは、理解できている。 「そんなに怖がらなくても良いじゃないか。ここにいるロウは、人間じゃないんだから」 遊ぼうとしていたのを邪魔されたロウだったが、リオンに頭を撫でられてくすぐったそうにしている。 なんだかんだで主人のことが好きなんだろう。
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