小さな小さな子犬ちゃん

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リオンがそういうと、ジェンは力を少しだけ抜いた。 「なんと驚く事に竜の子だ! はっはっはっは! どうだ驚いたかそして可愛いだろう!」 ぎゅーっと抱きしめるリオン。 何処からどう見ても不審者だ。警察がいたら間違いなく職質をかけられてしまう。 そして有無を言わさず交番までは行くだろうな。 今時こんな父親は見た事がない。 顔を赤くしてはぁはぁしている父親なんて。ていうかそもそも親子に見えない。 「どうだ! 羨ましいだろ! こんな可愛い娘がいるなんて!」 その後も延々と自分の使い魔の自慢ばかりを続けていた。 「主、お戯れはそこまでにしてください」 当然、気持ち悪かったので脳天に拳骨を落とされる。 気持ち悪いので当然だ。 「いってー」頭を抑えて涙目になっている。 それが面白かったのか、少しだけ表情が緩くなった。 「あ、そうそう。それとこいつも人間じゃないから。こいつ、こんななりをしているけど実は神様だから」 「こんななりって言わないで戴けますか?」 「あ、後普段は黒猫だから」 「黒猫ですわ。真っ黒な黒猫」 まぁ、気楽に行動できて良いのだけれど、と口を尖らせて付け足す。 「……おじさんは一体何者?」 おじっ……その言葉に一瞬絶句してしまうリオン。 身体年齢はファイたちと変わらないのだが。 「俺は何処の誰でもないよ。君の目の前にいるじゃないか」 すう、と自然に両腕を伸ばして、ジェンの体を抱きしめる。 ふわりとやさしく。 これを恋人にしたら一撃だろうな、という抱きしめ方だ。 なんという包容力。 高校生では絶対に出せない。 ファイはその光景を見ながら素直に感心していた。 「それじゃあ、帽子をとってくれるかな?」 リオンが優しく頭を撫でながら言うと、ジェンは素直に首を縦に振った。 おお、あれほど頑なだったジェンの態度をここまでやわらかくするなんて。 すぅ、と彼の小さな手が頭の頭の上に伸びると、帽子を取った。 その下からぴょこん、と現れたのは……。
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