小さな小さな子犬ちゃん

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「良かったじゃないか。随分と気に入られたみたいだぞ。安心しろ。ロウも貸しといてやる」 愉快そうに笑って、リオンは言った。 「まぁ、この場において何よりも幸運な事はカレナがいないことだが」 何気ないファイの一言だったが、その場にいた全員の首を頷かせるには十分なことだった。 「確かに。お嬢様ならこの耳を見た時点で発狂してしまいかねません」 と、ピアナは納得しながら言った。彼女が言うということは、間違いない。 「……ある意味、一番危惧すべき事態は回避できたから良いとしようではないか」 「まて、綺麗に終わらせようとしているが、こいつの食事をどうするんだ」 どっこらしょと腰を上げて立ち去ろうとするリオンを、ワルキは絶対に逃さない。 無責任に放り投げられて黙っていられるか。 そもそも兄弟がいないのに、どうやってこんな小さな子を相手すれば良いのかなんて、わかるわけもない。 「そのあたりは心配するな。ロウとヘルを置いていく」 「いや、自分の使い魔置いていくなよ。そもそも、俺の部屋にベッドは二つもねぇ」 「その辺は心配するな。俺が毛布を調達してきてやる」 「床で寝ろと?」 「お前、勘違いしているみたいだが、こいつらはあくまでも竜と猫だぞ」 「……どうしろと」 「少し考えろ。どっちもちっこくなるだろうが」 「一緒に寝ろと! 俺だって健全な男子高校生だぜ!」 「……そうか。俺の認識が間違っていた。最近の男子高校生は猫に欲情するのが普通なんだな」 「ちょちょちょちょ! 俺まで一緒って事はないですよね!」 リオンが納得したようにそういうと、ファイは大声でその言葉を消そうとする。 「いや、お前は幼馴染大好きだろ」 「良かった、まだまともだった」 「まともじゃないのはワルキだがな」 「待て待て! 俺がまともじゃないなんて誰が決めた!」 「俺だ。俺以外の誰がいる」 「誰も猫に欲情したりはしねぇ!」 「お前、ヘルと一緒に寝ると欲情するんだろうが」 「それとこれとどう関係しているというんだよ」 「よく考えてみろ。室内にいるときは大体人間だ。これに関しては欲情するのも仕方ないことだと思う。が、寝るときは黒猫だ。そんなのに欲情する奴は見たことがないね」 確かにその通りだ。
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