小さな小さな子犬ちゃん

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何処からか取り出した財布の中身を確認しながら、ヘルはそういう。 実は彼女、リオンの身の回りの世話というか、主にロウの面倒をみている為、リオンにいくらかの金額をわたされている。 その幾らかといっても、それなりの金額を持っている。もともとリオンが何故か金持ちだ。 なお、ヘルが猫の時でも食べ物は変わらない。量は減ってシンプルなものになるが。 「そういえば主が塩鮭を持ってくるといっていたな。あれはかなりの量があるからな。まわすとして……お前たち、何が食べたい?」 「肉!」 「肉!」 二人そろって肉だ。さすが肉食動物。 というか、無人島ではやたらと大きな骨付き肉をかぶりついていた記憶がある。 「はいはい。それじゃあ、買いに行こうかね」 彼女はそういうと、廊下を歩き始める。 周囲の視線はたっぷりとワルキたち一行に集まっている。 この学生寮、寮と言うのは名目上であって、その実は集合住宅以外の何物でもない。 つまり、学生だけが住んで良いアパートであって、寮監さんがいる訳でも寮母さんがいる訳でもない。 そのため、基本的には出入り自由だ。 無論のこと、夜中に帰ってきても誰も煩く言わない。 風呂場などは各個室に備え付けのものもあるが、大浴場もある。 なお、ワルキを除く三人はこの寮とは全く関係ないので、かなり好奇の視線が集まってくるのは仕方ない。 美女、幼女、犬耳。 気にならないほうがおかしい。 今は只、変な誤解だけはされないでくれ、という無駄なことを願い続けるのであった。 そしてこの他愛のない事が、大きな事件の発端となることに、彼らは気づいていなかった。 彼らが未だかつて無い程に巨大な事件に巻き込まれていく。
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