小さな小さな子犬ちゃん

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しかし、昨日は久しぶりに贅沢なものを食べた。 実家からの仕送りもあるが、無駄遣いしなくてもかなりつらい状態なので、正直ありがたい。 普段は必要最低限の食事をしているだけであって、ワルキ自身は大食漢だ。 腹が減っては戦は出来ぬ。がすぐに腹が減ってしまうので、どうしようもなかったりもする。 「かあちゃん、あさめしなぁに」 巫山戯てキッチンに立っているヘルにそう問いかける。 彼からしてみれば、ほんの悪戯程度の気分だったのだろう。 が、その返答は言葉ではなく物で返された。 ひゅん、頬を風とともに何かが通り抜けた感覚がした。直後に、ド、という壁に何かかが突き刺さる音。 冷や汗を流しながら、ワルキは背後を振り返ると、そこには包丁が見事に突き刺さっていた。 「次、言ったら命の保障はない」 台所で包丁を使いながら、彼女は振り返りもせずに言った。 そのときの殺気と言ったら。 土下座しそうになってしまった。 「は、はいすいませんでした」 思わず両手をあげてしまうワルキであった。情けない、実に情けない、が同様の状況において平然としていられる奴はもっと怖い。 そんな奴は、一体どんな人生を送ってきたのだろうか? 果てしない疑問である。 「虚勢、しかないよな」 「何を訳の解らん事をほざいている。さっさと座っていろ」 彼女がそういうのだから、ワルキは従うしかない。 おとなしくあまり大きくないテーブルの端に座ると、朝食が運ばれてくるのを待つ。 なんだか、落ち着かない。 カレナたちはこういった生活に慣れているのだろうが、彼はただの平民だ。 他人に朝食などの面倒を見てもらうといった事は、全くされたことが無い。 そもそも、外食すらあまりしたことが無いのだ。 それでも、温泉には何度か出かけたが。 「ほら、さっさと食え」 そんな言葉と同時に運ばれてきたのは、白飯と味噌汁、そして塩鮭の朝食だ。 勿論、市販だが漬物もついている。 「おおっ! こんな朝食は久しぶりだ!」 箸を片手に朝食にありつく。 ワルキの食糧事情は、本当に宜しくなかった。 何せ白米の貯蔵がゼロだったのだから。 そのため、昨日は米を買ってきたのだ。精米済みのものを。 因みに三十キロだ。ワルキ一人でなら一ヶ月は持つ。 とはいっても、ロウやジェンがいるから半月程度だろうが。 それを含めて昨日は沢山の食材を買った。
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