小さな小さな子犬ちゃん

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肉だけでなく野菜や魚など。 塩鮭はリオンが持ってきたものだが。 お陰で常時空っぽだったワルキの冷蔵庫の中には、大量の食材が詰まっている。 この学校に来て以来、初めてのことだ。 奇跡といっても過言ではない。 はじめはジェンの面倒を見ろといわれて、どうなることやらと思っていたが、風呂なんかはヘルが面倒を見てくれて助かった。ロウたちと一緒に入るには、小さい風呂釜だが。 案外、思っていたよりも贅沢が出来ているので、満足だ。 ジェンがやたらとべったりなのは仕方の無い事だが。 そんな幸福と共にご飯をかみ締める。 白米最高! なんて叫びそうになりながら食事を続けていると、ヘルは子供二人を起こす。 「ほらほら、朝ごはんが出来たよ。早く起きなさい」 ジェンとロウを揺すって起こす。 こうしてみていると、神様ではなく母親にしか見えない。 二児の母親、といったところだろうか。 人見知りの兄に、甘えんぼの妹。うん、ありえない話ではない。 あんな美人がお母さんか……。 ちょっと想像してみる。うん、悪くない。 「そこ、変な妄想をしていないで、さっさと食べろ」 心でも読めるのだろうか。 ナイフを投げられたりしたら適わない。流石にあたったら痛いじゃすまない。 ロウが目をこすりながらゆっくりと起きる。パタパタと羽を羽ばたかせながら飛び上がる。 「うん……おはよ、う」 ジェンもゆっくりと起き上がる。彼も眠たそうに目をこすりながら、耳と尻尾をパタパタと動かしている。 飛びながらロウはテーブルまでやってくると、そこで人間の姿になる。 「おはようございましゅ」 ロウは眠たそうに目を瞬かせながら挨拶をする。 「二人とも、顔を洗ってきなさい。それからご飯を食べなさい」 「はーい」返事をすると二人仲良く洗面所へ向かう。 しかし、平和だ。 流石に四人で暮らすには手狭だが。 食事を終えると同時に扉がノックされる。 「誰だ、こんな朝早くから」 「小僧、貴様が出ろ」 ヘルは動こうとしない馬鹿に向かってそういった。 流石に人型のヘルが応対に出るわけには行かない。それがわかってないらしい。 「はいよ」とワルキが返事をすると、扉へ向かった。 が、その前に閉めていたはずの部屋が一人でに開いた。
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