小さな小さな子犬ちゃん

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扉を勝手に自分で開けて入ってくる人物なんて、誰か分かっている。 分かりきっていることなのだが、生憎とワルキは彼に部屋に入られたことはないのだ。 警戒して、自分の武器を取り出して臨戦態勢をとる。 「おはようございまぁす……」 やたらと声を潜めて入ってきたのはリオンだった。 その能天気な面を見て、ワルキはほっとする。 「リオンか……驚かせるなよ……」 「なんだ、もう起きていたのか。つまらんなぁ」 舌打ち交じりにリオンはそう言う。 彼の考えでは、ヘル以外はみんな寝ていて、そんな中に自分が入っていき、寝起きドッキリを仕掛けたかったのだ。 なんというテレビに影響された人。 あれって結構心臓に悪いのだが。 「今日ほど早起きでよかったと思った日はないぜ」 心底そう思ったワルキ。 ファイが毎日あれだけのことをされているのだ。自分の身に何が降りかかるか……。 「まぁ良いぜ、お前に用があったしな」 「俺に用? 一体なんだってんだよ」 「まぁ、あれだ。中に入って座って話をしようじゃないか」 扉を閉めて、中に入るリオン。 丁度そこで洗面所から出てきたロウたちと鉢合わせする。 「あ、ご主人しゃま!」 リオンを見つけると一目散に飛びつく。 「おお、ロウ。ちゃんと良い子にしてたか?」 娘みたいなロウを抱えながらリオンはそう尋ねる。 「うん!」と彼女は元気よく返事をする。 「そうかそうか! 偉いぞぉ」 でれでれと表情を蕩けさせながらリオンはそういう。 なんとまぁ、子煩悩なこと。 「二人とも、朝食の時間ですよ」 奥で朝食の準備をしていたヘルが、そういうとジェンとロウの二人はすぐに行ってしまう。 リオンもそのまま中に入っていく。 「で、だ。あらためて、お前に用って言うのはだな。いや、お前に用があるんじゃないな、むしろお前の使い魔に用があるって言った方が正しいか」 「あいつに?」 流石にこれには、彼も疑問を持たざるをえない。
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