訪れる未来の女神

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「そんな事よりも、まだあいつは来ないのか?」 周囲を見回しながらワルキは言う。 「そう言えば確かに」 この場所にきてからかれこれ一時間は経過している。 「いえ、来ました」 優秀なメイドが言うと、店の扉が開く音が聞こえてくる。 そして声が響いてきた。 「窓際の席が良いな」 紛れも無いリオンの声。 全員、一斉にその方向を見る。 そこにはスーツを着用したリオンと、控え目ながらも清楚なドレスを纏ったクルドがいた。 その姿を確認すると、すぐさま二人から目を逸らす。 ウェイターがテーブルへ案内する。 そこは、リオンの注文通り、美しい夜景が見える場所だった。 ファイ達とは若干離れた位置に居る。 これでは会話が聞こえない。 「さて、じゃああれを付けて」 カレナの号令で一斉に耳に何やら、小型のインカムらしきものをつける。 「それで……」 それからクルドの声が聞こえて来た。 これはカレナの仕事道具で、おもに盗聴する際に使うものだ。 高性能な集音機器で、小型ながらも中々鮮明に音を拾ってくれる。 カレナ曰く中々値が張ったそうだ。 「それで、こんな所に呼び出して一体何の用かしら」 感情を一切含まないクルドの声。 「まぁ、そう焦るなよ。まずは注文しようぜ」 中々にせっかちな彼女にそう言って、リオンは注文をする。 さりげなくワインも頼んでいた。 中々の高級品だ。 それを聞いた委員長は頬を引き攣らせていたが、どうやら堪えたらしい。 本当なら飲酒なんてするな、と怒鳴りたかったのだろう。 だが、ここは耐えて貰わなければ。 こんな所で怒鳴るなんて赤っ恥も良い所だ。
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