小さな小さな子犬ちゃん

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額をこすりつけるようにしながら、互いにガンを飛ばしあっている。 「おー、やんのかコラ」 「上等じゃあ。貴族のもやし野郎にどちらが格上の存在か、教えてやろうじゃねぇか」 互いに胸倉をつかみ合ってそう啖呵を切る。 切ったは良い。 切ったまでは良い。 さて、此処で疑問が一つある。 クラスで喧嘩が起きた場合、必ず一人は茶化したり止めに入ったりする人物がいるはずだ。 だが、この二人のにらみ合いに関してだけは、ただ誰も無関心だ。 いや、無関心を装っているに過ぎない。 装わなければ、要らぬ被害を被る事になるのだ。 実に、洒落にならない。 「ほぉう……お前たち二人はよっぽど元気が有り余っているらしいな……」 「んだとごらぁ!」 「邪魔すんなやぁ!」 互いに第三者のほうを見て、そう怒鳴りつける。 が、その人物の顔を見た瞬間に、二人の時間は停止した。 サーと血の気が引いていくのが、よっく分かる。顔面蒼白で力の入れすぎではなく、腕が震える。 そう、二人は自殺行為をしてしまったのだ。 「教師に向かってその口の聞き方は何だ? え? この私に喧嘩を売ってんのか?」 そこにいたのは、まさしく般若、鬼、悪魔。 まさに恐怖そのもの。 彼らの担任教師様であった。 「宜しい。元気が有り余っているようで何よりだ。グランド千周。そのくらいは出来るだろう」 それの口から刑罰の内容が下される。無限走地獄と言う場所へ送られるらしい。
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