小さな小さな子犬ちゃん

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「何とかしろ」 ワルキから帰ってきた返答はたったそれだけだった。 確かに、巻き込まれた人から言いたい事は、何とかしろだけだ。 「何とか出来るもんならな。頑張ってくれ」 「いや、お前がやれよ。あいつの世話係なんだろう?」 「最近立場が逆転し始めている」 さらっととんでもないことを言うファイ。 確かに、ここ最近はリオンの面倒を見ている時間が少なくなった。 と言うか、学校以外では面倒なんて見てきたわけじゃないが。 なんとなく歪な感じがする。 「というか、俺はもともとあの人の目付け役だぞ?」 「どっちもかわんねぇだろ!」 「いいや違うね。ともかく、結論から言ってしまえば、あの人に関わってしまった以上、諦める以外のことが出来ないんだ」 しみじみと、首を縦に振りながらそういうファイ。 本当にあの人の所為で苦しめられた。それに対して抗おうとすればするほど、もっと苦しくなる。 別に人生とか生命の危険があるわけでもないので、諦めるが吉なのだ。 諦めて、言う通りにしてしまえば問題が無いのだ。間違ったことはしない人だから。 「……それしかないのかよ」 「それしかない」 きっぱりと言い捨てたファイにワルキは深い深い溜息を吐く。 自分で拾ってきた種とはいえ、リオンに玩具にされている気がしてならない。 手のひらの上で弄ばれるのは御免こうむる。 とにかく、今は走り続けるしかない。 放課後までに千周走り終えないと……。 あの人の場合、冗談じゃなくて本当に走れと言っているから、たちが悪い。 もし一周でもごまかしたりしたら……。 想像したくない。
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