小さな小さな子犬ちゃん

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ファイたちが全力でグランドを走っている最中、教室の中ではいたって平和に話が進んでいた。 「先日、聖オラトリオ学院で事件があった事はみんな知っているな」 担任は三人ほど席の空いた教室内を見回してそういった。 先日、ファイが死闘を繰り広げたあの事件だ。 あの事件は大々的に報道された為、みんな話くらいは知っている。 真相を知っているのは、ファイ達だけだが。従者が主犯だったということは伏せられている。 無為に話を広げても無意味だ。 それに、貴族としての面汚しでもある。獅子身中の虫、と言ったところか。 まぁ、不特定多数の人物が真実を知っている以上、報道規制をしたところで無駄なのだが。 現在には、報道機関よりもより優れた情報収集媒体が存在している。 インターネットと呼ばれるその情報媒体を使用してしまえば、報道規制など無意味に等しい。 何せ、その場にいた人物が情報を流すのだから。 「あんな事件があって間もないと言うのに、不審者の情報が入った」 担任は淡々とそういう。 別に特段、驚いているわけでもない。 当たり前なのだ。よくよく考えても見ろ。 戦争が終わって十五年しか経っていないのだ。生徒諸君には理解しがたいだろうが。 たったの十五年しか経っていないのに、この復旧率はおかしい。 そして、この十五年間、特に治安も乱れることは無く、平和そのものだった。 それはおかしい事なのだ。 歴史を見ても、敗戦ぎりぎりまで追い詰められた国の姿ではない。 如何に勝利をしたといっても、それはリオンの規格外の力のお陰だと言えるだろう。 つまり、もう少しでこの国は滅ぼされていたと言うことだ。 それが意味するところは理解出来るだろう。 「黒いフードを被り、顔を隠した数人の集団が目撃された。警察なんかではこいつらを、邪教徒か何かの危険な集団である可能性もあるとして、警戒するように言われている」
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