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食前酒が運ばれてくると、リオンはそれを口に運ぶ。
当然、クルドのグラスにもワインが注がれている筈なのだが、それに手をつけようともしていない。
「のみなよ」リオンがそう促すと、彼女は口を開いた。
「これで三回目になるのだけれど、私をここに呼んだ理由は何かしら?」
先程と比べると、些か険の籠った言い方だ。
流石にここまで延ばされると、苛立つのだろう。
「いや、それはこちらの科白だ。なんでお前がここに居る」
「おかしな事を聞くのね。貴方がこの場所に呼んだからでしょう」
「ふむ、なら問い方を変えよう。あんたは何で、あの学校に転校してきたんだ?」
「……それを聞いてどうする心算?」
「どうするつもりって言われても、ね。気になるじゃないか、ノルンの三女がいるなんて」
リオンは苦笑交じりにそう言った。
ノルン……ファイ達には聞きなれない単語だが、カレナは目を見開いて驚いた。
「高等学校なんてあんたのいる場所じゃないだろう」
くつくつと喉を鳴らしながらクルドに言う。
「……私には貴方が何を言っているのか、よく分からないわ」
「さて、そいつはどうかな? スクルド。あんたは一体なんであの学校に転校――いや、潜入してきたんだ?」
その言葉を聞くと押し黙るクルド。その瞳には疑心があふれている。
「おっと、俺がはったりをかましている、と思うのか? 残念ながらそうじゃないんだな。誰の命令だ? ウルドかベルダンディーか、果てはもっと上か」
「……それを知ってどうする気?」
リオンの言葉にそう返答するクルド。
それを聞いた途端にリオンの眼の色が変わる。
「なら認めるんだな? スクルドであるという事を」
口端をつり上げて尋ねる。
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